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シーサイドコートマガジン 西湘エリアを代表する別荘地。街そのものが歴史散歩。
湘南・はじめて物語。
 明治の頃から、多くの政治家や著名人が、別荘やリタイヤ後の居を構えた大磯。その歴史といい品格といい、大磯は高原のリゾート軽井沢に対し、海辺のリゾートとして肩を並べる、由緒ある別荘地です。海岸線とそれを見下ろすように、背後に広がる緑の山々。展望の良い公園も点在しているので、この景観を求めて散策を楽しむハイカーも多いようです。
 そんな風光明媚な大磯の風情は、古くから人々に影響を与えていたようです。西行法師がこの地を吟遊した際には、美しい景色を歌に詠みました。そしてこの歌にちなみ、江戸時代には小田原の崇雪が庵を結んだのが現在の「鴨立庵」です。日本三大俳句道場のひとつとして、趣きのある佇まいで訪れる人を迎えています。
 沢に架けられた石橋を渡り一歩中に入ると、外の喧騒が消えていきます。敷地内には、元禄時代そのままの建築物「円位堂」をはじめ、句碑・歌碑・墓碑が点在。時を越えて、悠久の風流人たちの息遣いが聞こえてきそうな場所です。
なお、この庵のすぐそばには“湘南発祥の地”の石碑もあります。前出の西行法師が、中国は湖南省にある洞庭湖のほとり、湘湖の南側の湘南に大磯が似ているから名付けたとの説が期されています。
 また、“はじめてつながり”でいうと、ここ大磯は、海水浴場の発祥の地でもあるのです。明治時代の1885年、初代陸軍軍医総監の松本順氏によって、日本最初の海水浴場が開設されました。国道1号線沿いには、これを示すように、大正4年に建てられた大磯照ヶ海水浴場の石柱が現存しています。 しかし、当時の海水浴は、健康増進が主な目的だったとか。色鮮やかな水着が浜辺を飾り、食事を楽しんだり…、とみんなでワイワイ騒ぐレジャーとしての現在の海水浴とは、ちょっとイメージが違うようですね。
手間を惜しまぬ、昔ながらの製法で誕生する一品たち。
 大磯が面する相模湾は、種類も量も豊富な魚の宝庫。新鮮な魚介類がいつでも食べられる、うらやましい環境です。魚・新鮮、とくれば、当然刺身!と、多くの方が思い浮かべることでしょう。しかし、ここで一言。実は、新鮮だからこそ食べたい加工品もあるのです。それが今回ご紹介する練り物です。
国道1号線沿いに佇む、大きな一枚板の看板が目印の「井上蒲鉾店」は、明治11年の創業という老舗。余計な飾り付けのないスッキリとした店構えの店舗に入ると、ケヤキの木で施された内装が、落ち着きと清潔感にあふれています。正面にカウンターがあり、ガラス張りのショウケースには、商品が並んでいます。といっても、こちらの取扱商品は、蒲鉾・はんぺん・さつまあげの3種類のみ。それでも、連日多くのお客さんがこの店を訪れる理由は、ずばり美味しいからにつきるでしょう。
 グチを1匹1匹手でさばき、つなぎや添加物を使わず、すり身と調味料だけで作り上げる蒲鉾とはんぺん、さらにグチとタラのすり身ににんじんを加えて作るさつま揚げは、まさに絶品です。わさびを載せ醤油をつけ蒲鉾を食せば、そのしっかりとした歯ごたえに、素材が魚であることを実感。新鮮さがストレートにわかる、鮮烈な香りが口の中に広がります。生魚とは一味違う、滋味深い蒲鉾の刺身が楽しめます。
創業当時の作り方を職人さんがそのまま継承。手間を惜しまず、昔ながらの手作りで一品一品を生み出す同店では、もちろん保存料も使っていないため、商品の発送は受付けていないという。いまやインターネット時代といわれ、どこもかしこも通販で売上増加をもくろむご時世。しかし、頑なに本来の製法・本来の品質を大切にするが故に、“楽して・簡単に”の流れにあえて逆行する「井上蒲鉾店」。ここ大磯で“時代に流されない”名店に出逢うことができました。
株式会社 井上蒲鉾店

[住所]255-0003 神奈川県中郡大磯町大磯1306
[TEL]0463-61-0131(代表)
[営業時間]8:30〜17:00